玉屋の坂(2002年9月  25×34cm repainted Jan/2006)
 
裏新町には旅館が一軒と料亭が二軒ある。旅館は徳川時代からある古いもので、成田詣でをする人々が旅の疲れを休めたところという。料亭も戦前からある古いもので、いまだつぶれずに頑張っているのは心強い。

これは玉家という料亭を描いたものである。なにしろ通りの裏側はすぐ崖になっているので建物は崖に寄りかかるように建っている。脇は急な坂になっていて、料亭の玄関は坂に面して開いている。玄関を入ると、客は急な階段を上り、二階の見晴らしのよい部屋に通される。

私の父親は佐倉に落ち着いて以来、よくこの料亭を利用したらしい。外に気の利いた店がないので、市内の人々はここで宴会を催すことが多いのである。私自身は永らく立ち入ったことはなかったが、父母の死後ここで法事を催したりするようになった。古い建物で部屋のあちこちがきしみ、建てつけも悪くなっているが、古い店なりの風情を感じさせ、なかなか落ち着いた雰囲気を味わえる。戦前は佐倉に連隊駐屯地があったことから、軍人さんの贔屓を得て繁盛したそうである。




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