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後醍醐帝笠置御潜逃図:曽我蕭白の世界




「後醍醐帝笠置御潜逃図」とは、保存用の箱書きに記された言葉。おそらく太平記にある話を踏まえたものだろう。太平記には、倒幕に失敗した後醍醐天皇が、側近たちと共に笠置に逃れたと記されている。その記事をイメージ化したものと思われる。だが蕭白一流のちゃかしのようなものを感じ取れる。

後醍醐帝はそまつな白衣を着て、裸足である。側近たちは樹下で寝ぼけているが、いくら疲労していても、警護の任務を投げ出して寝ぼけているとは職務怠慢も甚だしい。その側近たちが身を投げている木には、桜の花が咲き誇っているが、後醍醐帝一行が笠置山に逃れたのは紅葉の季節であり、太平記の記事と一致しない。

この絵のポイントは、追っ手を気にする後醍醐帝の緊張感に満ちた表情と、側近たちの間抜けた表情との著しいコントラストだろう。また、桜の木の描き方が、かなり凝っている。とくに花びらには、ある種の妖気を感じ取れる。

(1764年頃 紙本着色 127.1×78.1cm 個人蔵)





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