東京の川と橋 Rivers $ Bridges in
TOKYO
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東京の川と橋の歴史:知名庵論考


東京の川と橋の歴史について、壺齋散人の長年の友人である知名庵ことわたくくしが、浅学ながら研究・調査のうえ、その成果をご紹介します。

関東南部、東京周辺の地図を開いてみると、千葉県との境から西に向って、江戸川、中川、荒川、隅田川と大きな川が4本南北に平行して流れています。隅田川を渡った更に西側には隅田川の支流として、石神井川や神田川が流れ、また荒川と隅田川に挟まれた、いわゆる江東デルタと称される地帯には東西南北縦横に運河のような小河川が何本も走っています。

現代に生きる私たちにとって、これらの川は昔から悠々と同じ場所を流れ続けてきたようにも思われるのですが、実は長い歴史の中で大規模な改修を加えられて川筋が変ってきたのです。また、荒川は水害対策として大正年間に新たに作られ、中川が完成したのは昭和の半ば頃(1962年)だったのです。

隅田川といえば江戸から東京へかけて、この町のシンボルであり続けたのですが、一時期、高度成長の頃には川の水が汚濁され、近づくのもはばかられる死の川となったこともありました。現在では水もかなりきれいになり、また堤にも工夫が加えられ、市民が川面近く散策を楽しめるようになってきました。

散人は隅田川をはじめ、東京の川に架かる橋の風景を好んで描いています。そんな散人の営みを見るにつけ、私は東京の川と橋にまつわる歴史的な事項を調べ、その由緒来歴の一端を明らかにすることにより、散人の絵を鑑賞するにさいしての一つのてがかりにでもなればと、この論考を起こしました。

もとより専門の学者でもないわたくしが、少ない資料をもとにまとめるものですので、なかには誤謬や脱漏も多くあろうと思います。正確な事実の指摘や新しい資料などについて、ご指摘いただければ幸いです。


第一章  東京の主要河川の流路変遷
 1 東京の主要河川の現状
 2 徳川時代以前の江戸の河川流域図
 3 利根川の東遷、荒川の西遷
 4 荒川放水路の開削と震災復興橋梁
 5 新中川の開削と江東デルタ地帯の治水事業
第二章  隅田川今昔物語
 1 王朝文学に現れたる隅田川
 2 中世前期の隅田川
 3 中世後期の隅田川
 4 徳川時代の隅田川
 5 明治以降の隅田川
 6 隅田川の現在
 7 能「隅田川」について
第三章  隅田川右岸の小河川と掘割
 1 太田道灌時代の江戸城周辺図
 2 家康入府後の江戸
 3 幕藩体制確立期の江戸
 4 江戸城36見附
 5 江戸の上水道
 6 芭蕉と神田上水
第四章  墨東の運河網
 1 100年前の東京
 2 徳川時代にいける墨東の運河開削
 3 明治以降の東京臨海部の埋立
 4 荷風と深川の橋


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